新年あけましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりました。
昨年2024年は、
1月元旦の能登半島地震と9月奥能登豪雨
9月のフランス・ベルギー視察(訪問箇所、パリ、モン・サンミッシェル、ブルージュ、ブリュッセル)
の2点が大きな影響を及ぼしたことでした。
能登半島地震は、何度か現地を訪問する中で、災害の甚大性、多様性を実感しました。また、半島であるが故の支援の困難さや道路事情の悪さ、最も近い大都市金沢から奥能登までの距離が問題と指摘されますが、もっと大きな問題があると感じています。側方流動で土地そのものが大きく動き、被害が甚大で面的な復興が進んでいない内灘町など金沢中心部から30分ほどの被災地でもそうであるように、残念ながら世論の関心が低いと感じられる点です。それは、9月豪雨への関心の低さも同様です。
9月のフランス・ベルギー視察は、2019年(スペイン、イタリア、スイス)以来5年ぶりの海外視察でした。たまたま、出身研究室の後輩でもある杉本容子さんが、ご家族でベルギー・ブリュッセルに半年ほど滞在され、うかがえばご案内していただけるとのことで、ご厚意に甘えて、シルバーウィークにあわせてスケジュールを組んだ次第です。ベルギーは、関西からの直行便はないため、どこかを経由することになるわけですが、パリ・オリンピック、パラリンピックの閉会直後にあたる、またとないタイミングでしたから、迷わず、パリ経由を選択しました。パリでは、ロータリーの広場化や車道の自転車道化、中心部や「15分都市」の象徴となる小学校近くの自動車交通の排除など、脱炭素化とライフスタイルの変化、そして、少子化対策を背景する道路空間の再配分について、ブリュッセルでは、Maasの成功など公共交通優先施策とダイバーシティのまちづくりへの実践というテーマで、それぞれかなり隅々まで見て回り、体感することができました。
視察については、能登半島地震の復興に、休眠預金活用事業などで多少関わり、大いに気になっていた中、行くべきかどうか悩みに悩み、結局、フライトを予約したのは、8月末と直前になりました。
視察の直接の動機は、神戸市での道路空間の再整備に関する社会実験を11月に、その後、12月に駅前広場再編の基本計画立案作業を控えていたことにありました。国内の先行事例を把握する中で、速やかに実現しているものの十分な成果が得られていないと思われるものや、時間をかけて、進められているものの、あまりにも手間がかかり必要なタイミングで効果が発出しないのではないかと思われるケースがあると感じ、一方、海外では、「選挙公約からの一貫した政策」「市民のライフスタイルの変化」「効果的な整備が短期間で実現」という情報を書籍などで把握する中、にわかに信じがたく、現地での市民レベルでの評価と当然ながら、日本とは異なる事情と共通する点があるでしょうからそれを適切に見分けた上で理解する必要があり、これらをしったかぶりするのではなく、論理的には不十分でも肌感覚としては十分に身につけておきたいと視察を決断した次第です。そのため、パリでは、サイクルシェアをフル活用し、コストも相当かかりましたが、自動車交通を排除した中心部、途方もなくつづく自転車道、いくつかの区で整備された小学校周辺のウォーカブルな環境などを体感することができましたし、ブリュッセルでは、杉本さんと、お連れ合いの武田さんに市内で政策の動きが見て取れる主要な箇所を公共交通と足を最大限活用してアテンドいただきました。
一見無関係なようですが、能登半島地震と視察を通じて感じた政策合意にもとづく都市の再編は、通底するものがあると感じています。それは、政策の論理性、市民のライフスタイルへの浸透性、政策を実現する整備のスピード感です。パリで日本への留学経験のある若手建築家の方から、パリ市の15分都市構想は、成果は生じているのか、市民はその変化とメリットを享受しているのか、パリ郊外の水路沿いが気持ちよく整備されたエリアで夕食を食べながらディスカッションしました。すべてが建築家の彼の関心事ではありませんが、間違いなく大きな変化で、それは、オスマンの大改造以来の大改革であり、成果を市民も享受しているとのことでした。背景には、脱炭素の問題もあれば、出生率の低下の要因とされているパリ市民の暮らしにくさがあるのでしょう。
さて、視察後は、11月の道路空間の小規模ですが1ヶ月に及ぶ社会実験、12月の駅前広場再整備の基本計画の立案に挑みました。十分ではないでしょうが、少なからず、能登半島を何度か訪問した経験、海外視察の経験は、市民感覚をいかにつかみ、無関心という最大の敵に対してどのように挑むかという姿勢と政策や空間整備手法という点で業務に役立っているかと感じています。
2020年4月に緊急事態宣言が発令され、2023年5月の新型コロナウイルスの感染法上の分類が5類に移行した後、1年半が経過し、それを学んだ海外都市に対して、日本の都市は、十分に学べていないような気がします。わたしたちは、少なからず、そのトレンドに沿った業務を行っているということを肝に銘じて、あらためて、振り返り、反省し、今年のふるまい、業務に活かしたいと思います。
そう、パリはかつてコレラ後に大きく変わり、また、コロナ後に大きく変わりつつあります。わたしたちも辛い思いを忘れずに変わらなければなりません。まずは、今年、能登半島の復興が加速度的に進むことを願っています。
今年は、2月に東京で、外国人と共に暮らし支え合う地域社会形成事業の最終報告会&交流会があります。日本都市計画家協会の理事としても関わり、街角企画として、沖縄、神戸、京都、名古屋の4つの外国人支援団体の伴走支援を担当しています。無関心といえば、誤解を恐れずに言えば、外国人、ダイバーシティのことはこれからの日本にとってパラダイムシフトが必要な大きな課題です。。以前は、地域社会に対しては少なからずインパクトを投げかけてきたかと思いますが、このように日本社会全体に対して、大きなインパクトを投げかける事業に関わる機会が得られたらことを誇りに感じています。2月9日(日)開催で、一般参加、オンラインでの視聴も可能です。年明け早々に参加申し込みを周知させていただきますので、少しでもご関心のある方はぜひ、ご参加ください。
年始から長いご挨拶となりました。2025年もひきつづきよろしくお願いします。
街角企画株式会社 代表取締役 山本 一馬