バルセロナ研究の阿部大輔さんの案内で、スペイン・バルセロナを視察してきました。都市再生を中心に、住宅建築、街並み、デザイン等をレポートします。
期間は、2019年4月26日~4月28日の3日間。
バルセロナの敷石のこと
バルセロナの歩道には、素敵なデザインの敷石がたくさん見られます。その中で、よく見ることができたのはこれ。
一番初めに使われたのは、Casa Amatller(カサ・アマトリェール)の入り口といわれています。Casa Amatllerは、グラシア大通りのCasa Batllo(カサ・バトリョ邸)の隣にあります。建築家はモダニズムで有名なプッチ・イ・カダファルク。
今回は時間がなく、カサ・バトリョ邸の見学だけで終わりましたが、次回バルセロナを訪れた時はぜひ行きたい場所です。
ちなみに、カサ・ミラ邸の前の歩道にはこちらの敷石が敷かれていました。
こちらは、カサ・ミラ邸。
<参考サイト>
https://gyuopera.exblog.jp/20129852
https://www.da-sola.com/entry/2018/04/30/casa-amatller
http://carmen.chu.jp/amatller.htm
道路構造のこと
メインストリートといわれる、道路幅が大きい道路には、歩道の横に自転車道がついています。
自転車道が設置されているヨーロッパの国々はたくさんありますが、バルセロナのこの大通りには、歩道の一部に自転車道があります。
どちらかというと日本の都市の歩道で、時々見ることができる点線の白線だけで区切られたパターンと似ています。
ただ日本と違うのは、白線だけで区切られた自転車レーンをバルセロナ市民はきちんと順守しています。日本の歩道の中の自転車道では、運転者はほぼ守っていません。自転車運転者も意識していないし、歩行者も自転車道部分を歩いています。
さて、この写真の通り、自転車道には多くの自転車が通っており、うっかり私たちがその自転車道に踏み入れ、自転車運転者から注意のベルを何度も受けました。郷に入れば郷に従え、です。
もちろん右側通行ですので、日本とは違い、不注意で危ない目にあいそうになりました。道路を横断するときは、左側通行になれている私たちは慣れるまで両側確認していました!
レンタサイクルのこと
バルセロナ市内では、赤い自転車が目印のレンタサイクルを使った移動が便利です。
システムとして市民登録が必要なので、観光客は使えず残念でした。 よく調べたら、店舗サービスで「レンタサイクル店」があるようですので、次回は事前調査して自転車移動をしてみたいと思います。
バルセロネータ地区にあるレンタサイクル店。2時間6ユーロ、1日18ユーロ。
<参考>
「Viu Bicing」(レンタサイクル)について
https://www.bicing.barcelona/
「Viu Bicing」使い方ガイド
https://ameblo.jp/feliznavidad8/entry-12217442097.html
自転車レンタル店情報
https://ameblo.jp/tabizuki-kbell/entry-12201747830.html
地下鉄のこと
バルセロナ市街では、地下鉄移動が大変便利です。
日本とは違い、少雨という気候なのでしょうか、地下鉄入り口は屋根がなく開放的です。
少人数グループでは、Tarjeta T-10 という回数券が便利だと阿部さんに勧められ、この販売機で購入しました。もちろん、クレジットカードです。
●T-10の5つのメリット
- 数人で1枚の回数券を使うことが出来る(便利!)-使いまわしができる
- 値段は、片道の切符の半額になる
- 地下鉄、市バス、路面電車、郊外電車、カタルーニャ電鉄、夜行バスのご利用は可能
- (使える)ゾーン1は、とても広い
- 有効期限は、心配しなくても良い
それと、注意事項?として3つ。
※ 地下鉄にはスリが多いといわれています。十分注意して下さい!!!
※ 地下鉄駅には公衆のトイレはありません。
※ エスカレーターに乗る時、歩かない人は右側に立ちます(大阪と同じ!)。←これはうれしかった!
<参考>
バルセロナ地下鉄について
https://www.catalunya-kankou.com/barcelona/barcelona-metro.html
念願のグエル公園
繊維業を営んでいたエウセビ・グエルが、イギリスで聞いた、ユートピア的な田園都市をバルセロナにも建設するという事業を起こしました。
1899年、郊外の斜面地約15ヘクタールを手に入れ、自動車道や遊歩道、斜面地であるため、陸橋も建設された分譲地ができました。
しかし、実際に分譲されたのは2軒分のみでした。
分譲地のほかに、門番小屋、コミュニティセンターとなる柱が立林する広場、その両側にある階段を上がると、波打つベンチがある広場につきます。
ガウディ建築の一つ、グエル公園。
サグラダファミリアと同様に、事前予約をしていきました。
※朝8時前は有料ゾーンも無料になるという情報を知らずに行き、8時前に到着したところ、すでに観光客らが大勢いました。
入口正面の階段に横たわっているのは、タイルでできた有名なドラゴン。観光客を出迎えてくれます。記念撮影で人が途切れません。
屋根のかかった立駐広場にある柱の上部。天井面にセラミックのモチーフがデザインされている。ここは市場となるはずだった。
屋上広場の波打ったベンチ。張りつけられたセラミックはリサイクルですが、上端の半円形のセラミックは特注。そういった使い分けも、勉強になります。
山を切り開いて開発されたグエル公園は、なるべく自然を崩さないように、日陰の遊歩道の壁は山の傾斜を残し、その上に陸橋をつくりました。
遊歩道には、地元の住民が早朝の散歩をしていました。ガウディデザインが日常に感じる生活を送っていることがわかりました。
そのほかたくさんの写真を撮ってきました。
アルバムを見て、しばしグエル公園の散歩をお楽しみください。
<参考>
グエル公園公式サイト
https://parkguell.barcelona/en
※2019年4月より無料のシャトルバスが地下鉄Alfons X駅から運行が始まり、簡単に便利に行けるようになりました。なお、シャトルバスを利用できるのは、無料と言ってもオンラインで既にチケット予約購入済みの方のみが対象になります。
カフェテラスのこと
今回の視察の私の目的の一つで、参考にしたのが、「マイパブリックとグランドレベル」でした。この言葉は田中元子著の本のタイトルです。
田中氏は「1階づくりはまちづくり」という考え物も会社を立ち上げ、グランドレベルでの事業を企画・実施されています。
私も、まちづくりの仕事をしていく中、この考えを持ち、今回の視察でも調査しました。
街のあちこちに、テーブルとベンチ、そしてパラソルが置かれ、この3つがテラスの必須アイテムになっています。
どのアイテムも店舗のセンスがわかるデザインで統一されています。
ここの店舗は広場に面しています。店舗の入る建物のそばの大きなスペース(約50m2)がテラス席になっています。
また、広場の真ん中には、また違う店舗のテラス席になっており、広場のあちこちにある多数の違う店舗のテラス席が、街の景観をつくっています。
※ちなみに、テラス席の営業は公道を使用するため、別途許可を申請し、場所、席数等の条件に応じて使用税を市に支払うことになっています。そのため、室内での飲食より料金を高く設定する店舗もありますが、開放感のあるテラス席は季節に関係なく人気があります。
<参照>
「マドリード・バルセロナスタイル」日本貿易振興機構(ジェトロ)発行、2017年2月
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2017/80488bdef608b6df/MADBCNstyle6-all.pdf
こちらのカフェテラスは、街路の通り沿いの店舗にあり、街路樹にあわせて整列させてスッキリと配置されたテラス席。
道幅に合わせた置き方で、どう過ごしたいか、どんな雰囲気を味わいたいか、が変わります。
先ほどの広場に面するテラス席と違い、静かに会話を楽しみたい雰囲気。
パラソルはないですが、ベンチの赤青黄色のクッションがこの店舗のシンボル。
ベンチを赤で統一。バルセロナはこの赤がよく似合う!ひじ掛けがあるだけで、ゆったり過ごせます。
ガウディ作の街灯があるレイアール広場。回廊沿いの店舗にはテラス席があり、回廊の外の広場にまでテラス席が広がっています。
レイアール広場とカフェテラスとガウディの街灯で、しばし散歩を。。。
ゴシック地区を歩く
今回のバルセロナ視察の目的の一つ、ゴシック地区を歩きました。
ゴシック地区は、カタルーニャ広場から南へ600mほど行くとあり、昔、城郭に囲われていた名残が垣間見えます。
龍谷大学政策学部政策学科の教授であり、視察当時、バルセロナ在住の阿部さんから、地図を指し示しながら街を案内していただきました。
阿部さんの書籍のご紹介
「バルセロナ旧市街の再生戦略―公共空間の創出による界隈の回復」
内容:過密街区に穴をあけ、公共空間を創り出す「多孔質化」により、疲弊した界隈に再び人が集まり留まり始めた。個別的で小規模な広場や道路整備、建物の修復や建替えを起点に、地区全体の再生へとつなげていくバルセロナ・モデル。経済追従型の都市再生とは一線を画す行政主導のまちづくりに、新たな居住環境整備の可能性をみる。
13~15世紀の建物が立ち並ぶ、旧市街地の中央に位置するゴシック地区は、カタルーニャ自治政庁や市庁舎といった政治にかかわる建物のほか、ピカソ美術館など芸術関連の建物があるなど、歴史的に重要な地区です。
上の写真は、サン・ジャウマ広場。向かって左の建物が市庁舎、右側の旗が見える建物がカタルーニャ自治政庁。
また、ゴシック地区には、有名な教会などの観光資源もあり、観光客らが大勢歩いていました。
上の写真のように、細い街路に4階以上の建物が建て詰まっていて、治安や衛星が悪くなっているところもあります。
その中、街区全部を広場などの公共空間にした「多孔質化」によって、その問題を解消していきました。
道路の真ん中にある広場は、もともと1街区ありました。それを取り払い、道路に沿った広場になりました。写真右に見える広場がそれです。
グランドレベルのこと
1階部分にどんな土地利用をするかで、街のにぎわいが違ってきます。
大通り沿いの1階には、カフェや雑貨店がありました。こういった人の息遣いの感じられる店舗は、まちのにぎわいや人通りに大きく影響します。おおよそ、こういった種類の店舗は家賃が高いと、採算が合わなくなるので、家賃がどうなっているのか気になりました。家賃が上がると撤退さぜるを得なくなります。
阿部さんに伺うと、ここ数年土地の値段が上がってきているとのこと。このまま上がり続けると、こういったお店も継続できなくなる恐れがあるかもしれません。
観光で有名なランブラス通り
バルセロナの見どころの一つ。観光客も多く、花屋や大道芸人がこの空間をにぎやかに活力あるものにしています。
土産物店。小屋デザインも洗練されています。
バルセロネータ(ベイエリア)地区を歩く
ゴシック地区のある地下鉄ジャウメ・プリメール駅から南へ1駅のバルセロネータ駅で下車。
たったひと駅なのに、空間密度が違います。昔から海水浴場としてにぎわっていた海岸地域で、当時から営業する様々なシーフードレストランが残っています。街路樹が大きく育ち、建物とのバランスが美しいです。
広めの道路から横丁へ行くと、レンガ造りの古い建物が立ち並んでいます。
街区の一角に、市民が小さな苗木を育てるスペースがありました。日本でも震災後にたくさんできた、街角広場的な場所に似ています。
この辺りはプロパンガスで、住宅街にガストラックが走っています。オレンジ色のタンクが、街の雰囲気に合ってます!
バルセロネータ地区にある海岸から、地中海を望む。270度!
スペインはバルコニー文化
スペインでは、外部と内部をつなげるバルコニーの表情が豊かです。日本の濡れ縁や縁側のような感覚かもしれません。
ガウディ建築をはじめ、バルセロナの建築には、鋳鉄技術が発達していて、いたるところに装飾として使われています。
バルセロナのあとに向かったビルバオは鉄鉱石の採掘及び加工技術が、当時世界的に有名でした。
植木鉢はもちろん、時折洗濯物も。手すりは鉄でできているのでしょうか、ガウディ風の曲線デザインも多く見られました。
建物壁面はそろっていますが、バルコニーが出ていて、そこには植木鉢やベンチが置かれて、殺風景になりがちな都市景観が温かく感じます。日本の法規的な壁面やバルコニー面のとらえ方が違います。日本では道路境界線から、バルコニーを含めた壁面のセットバックの距離が重要ですが、ここでは、外壁面がそろっており、バルコニーはそこから出している、そういったところが見え方、雰囲気の違いを生み出しています。
落書き?アート?
とにかく落書きが、日本の比ではない。日本では、落書きは良くないものとして認識されていますが、ここでは一権利を得ているように感じられるほど、数が多くしかも当たり前のように存在しています。
いつだれが描くのだろうか?というペイントの落書き。
この周辺には、こういったフェンスがつながっていて、この通りを歩くと、バックの青空が気持ちいいので、ストリート系というジャンルの絵画鑑賞をしている感じがしました。
公共の憩いの場のこと
カフェテラスだけではなく、道路や歩行空間という公共の場所が、いろんな形で市民を楽しませる要素が点在してました。
卓球は国民的スポーツではないですが、屋外に卓球台が点在していました。
近づいてみてみると、台面にはサッカーコートのデザイン。やっぱりサッカーやん!と突っ込み入れたくなりました。
魅了されたカサ・バトリョ邸
カサ・ミラ邸よりもオススメ、という話を聞き、ノーマークだったカサ・バトリョ邸へ。前日の夜に予約をして、当日早めに着きましたが、もう長蛇の列でした。
ガウディは、繊維業者のジェゼップ・バトリョ氏の依頼を受けて、グラシア通りにあった大邸宅のファサードの改装設計を行いました。20世紀当初、ファサードは財力を誇示する一つの場所でもありました。
明かり取りのための吹抜け空間であり、まるで海の中にいるようで、何時間いても飽きない空間でした。
カサ・バトリョ邸の特徴的なデザイン5つ
- ファサード
- 共用階段・吹抜け空間(前述)
- 屋根裏
- 裏庭
- 屋上
これらの特徴的なデザインにより、この建築は、光、熱、空気(換気)を最小限のエネルギーで持続できるように設計されています。
屋根裏空間には、洗濯干し場などの家事室があります。また、換気を施す換気口があり、空気の温度差で大量した空気を循環させていました。
正面ファサードとは反対面に、2階レベルから屋外に出ることができる裏庭があります。地下に光を取り入れ、建物全体に通風できるように計画されています。デザインは正面ファサードよりも軽快にするため金属製の格子が使われています。
屋上には、吹抜け空間の天窓、装飾された煙突があります。ガウディはキノコやうろこなどの有機的造形物をモチーフにします。グエル公園と同様で、彼自身の自由な表現を見ることができました。
<参考>
スペイン基本事項参考
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2017/80488bdef608b6df/MADBCNstyle6-all.pdf
記:山本和代