2020年1月上旬、奈良ホテルを見学できる機会をいただきました。
その時の様子をレポートします。
奈良ホテルについて
日露戦争の勝利に沸いて、外国人を受け入れる必要性が出てきた明治42年、「関西の迎賓館」として開業しました。
大日本ホテル時代→鉄道省直営時代→日本交通公社時代→都ホテル時代→奈良ホテル時代
と大まかに5つの大きな時代を経て今に至ります。
本館の設計は、東京駅や日本銀行本店などを手掛けた、辰野金吾氏です。
建設費は35万円で、鹿鳴館の建設費が約18万円だったことから、「関西の迎賓館」といわれるのもうなずけます。
<建築概要>
敷地面積 21,618㎡
建築面積 3,523㎡(新館含む)
延床面積 12,532㎡(新館含む)
階数 地上2階(本館)
構造 木造(本館)
<参考>
https://www.narahotel.co.jp/history.html
まるで社寺のような外観
ロビーラウンジ「桜の間」
訪れて、初めにこのお部屋で奈良ホテルの概要の説明をしていただきました。
玄関ホール
客室
耐震補強工事について
今回の見学の目的の一つの耐震補強工事で、ダイニングルーム「三笠」の工事現場を見学しました。写真撮影がNGでしたので、文章レポートをします。
1)工事期間(約3年間)
平成29年(2017年)5月~ ※一部客室リニューアル工事は、平成29年4月~
2)工事内容
a. 木造本館の耐震補強工事
b. 一部客室等のリニューアル工事
c. 老朽設備取替工事(電気、空調、ボイラーなどの設備)
「複層斜交重ね板壁」工法
今回の耐震補強工事では、大規模木造建築物では国内初となる「複層斜交重ね板壁」を採用。
この技術は、東洋大学の松野浩一教授によって考案されました。
最大の特徴は、壁の柱館での補強を部屋内側から行えることです。
伝統的な建物の補強方針として、外観の保存価値が重要なので、外部に補強を設けないこの方法は、とても有効です。
また、伝統木造工法による建物内部も、落とし込みの根太床組みや格天井があり、補強工事による改修部分を最小限にとどめるように、床面から天井面までの大壁面のみに補強部材を集中させる方法として採用されました。
この壁の小幅板を本実矧ぎで継ぎ、三層に斜交して重ね、接着剤等を使わず、ビスのみで枠材や既設部材と接合させています。伝統工法の特長であるしなやかさを生かすため、強さ・肩さ・粘り強さの3拍子揃ったこの壁を採用したとのことです。
<参考>
https://www.narahotel.co.jp/images/blog_news/pdf/news_20180328.pdf
https://www.kenkocho.co.jp/html/publication/183/183_pdf/183_13.pdf
ダイニングルーム「金剛」
見学会のあと、ランチをいただきました!工事中のダイニングルーム「三笠」の代わりのダイニングスペース「金剛」です。
食事後、写真は撮らなかったのですが、ショップコーナーでは奈良のお土産のほか、レストランで出されているお料理が味わえたり、お部屋で使えるたりする、奈良ホテルオリジナルグッズが販売されていました。
行きは近鉄奈良駅からシャトルバスでしたが、帰りは歩きで。
途中、興福寺、五重塔、鹿、ひがしむき商店街を見て、帰路につきました。
奈良ホテルの施設管理を担当している河田さんに特別に案内していただきました。心より感謝いたします。
レポート記:山本和代
フォトギャラリー
※2020.8.12:一部修正しました